さらばわが愛 鑑賞

TVで特番をやっていて、SYOくんが軽くナビをやっていたから見たんだけど,これは舞台の特番というよりHIGASHIさんの特番だった。お話の壮大さとか、時代背景とかこの舞台のおもしろいところにはほとんど触れてないのが残念。


で、これ見てたら、HIGASHIが女形になるにはムリがあるかも・・と思ってたんだけど、実際見たら、なんのなんの。筋肉質な体型を感じさせない、そして長年ダンスで磨いてきただけある物腰の美しさとキレはさすが。京劇の所作もなかなか形になっているように見えた。踊っている時は、蝶衣の姿が見えたような気もする。


ただ、踊っていない時の蝶衣はどうだろう?
HIGASHIの生来もってるのであろう、動作の真面目な美しさと、真剣にエンターテイメントに取り組む姿勢が重なると蝶衣のゆらぎがにじんでくる隙がないように感じた。どっちかつうとしっかり男のままでいた。現世と舞台の間の境、男と女の間の境をふっと無意識に超えるような眩暈のようなゆらぎが見たかった。


どうしても映画の哥哥と比べてしまうのはしょうがない。彼は一瞬であちらへ、こちらへ、自由に行き来しているように見えた。やっぱりすごいな。でもHIGASHIさんも善戦していたとは思う。


シナリオはあまり映画と変わらないようだったけど、ラストは映画と違って、菊仙が娼婦だった過去を共産党の前で暴露され、自害した直後にその場で蝶衣と段小樓が覇王別姫を舞う。時代の変遷に絶望した蝶衣はそこで首をさして自害してしまう。映画ではさまざまな苦難の時代を超えて、平穏を取り戻した現代に再会した2人が再び覇王別姫を舞い、覇王を演じる段小樓を蝶衣が満足そうに見つめた直後に、別姫のごとく自分の首をさしてEND。



今回は段小樓の裏切りや、時代の変化に絶望したまま蝶衣が死んでしまうのがなお切ない。エンディングはオープニングが再現され終わる。幼少時代の蝶衣が母親に「6本目の」指を切り落とされるスローモーションのシーンが、映画のセリフ「私たちは運命にからめとられたのだ」(だったかな)を感じさせていた。



思っていたよりシンプルな演出でした。
でもこれ音楽劇じゃなかったらもっといいのにな。