つなぐもの

めざめると、枕の右隣にダンボールが伏せてあった。


一ヶ月餌をあげてない事に気づき、あわてて飛び起きてダンボールをあけて見る。


こわごわとその生き物の様子を伺う。


なにもなかったように、前足を身体に引き込んで、ウサギはそこにいた。


白いウサギの背中のちょうど真ん中あたり、目の色のような赤い穿孔が見えた。


にじんではいるが血は止まっているように見える。


急いで冷蔵庫に走り、にんじんを一本もって、
ホールケーキの底のような台紙に座るうさぎの口元に当てる。


とたんにウサギは小刻みに口を上下させながらにんじんを食み始め、
いったい一ヶ月の間どうしていたのか考えることもやめて、
その元気な食べっぷりを見ていた。


ウサギは夢中でにんじんを食べていたが、
ふと口を動かすのやめてじっといていたかと思うと、
突然自分の胸に飛びうつってきた。


肩に前足を絡め、後ろ足を胴に乗せて、
くつろぐように頭をちょこんと肩甲骨あたりに置いている。


突然のことなのに、ちっとも驚かずそのままにしていたが、
ウサギのお腹から伝わる体温とか、肩に軽くかかかる前足の重さが
かつて感じたことのない心地よさで、
ずっとこうしていたいと思っていた。


しかし、ウサギは飛ぶことができたんだ?とふと考えたとたん、目が覚めた。




それが母親の手術の日の朝の夢。


先週の金曜日に胆石の摘出の手術を受けた。


その6日まえに、39度の熱があり、お腹が痛いと言って、弟に夜中病院に連れてって
もらったら、胆のう炎だった。緊急入院して手術が決まって、先週は自分も顔を見に行
った。


なんせ今まで病気らしい病気などしたことがなく、入院も、手術も初めてだったので不
安だったみたいだ。


早く診てもらえば内視鏡の手術で済んだのに、検査結果が怖いからって、
漢方薬で様子をみていたらしい。
夏帰ったときも、「食べると痛い」っていってたもんな。


年いってる親と離れて暮らすことをここ何年も考えているのだけれど、
これが正解という考えはやっぱり浮かばない。


今まで元気でいてくれたことに感謝するばかりだ。
じぶんの仕事、生活、弟のこと、呼び寄せる、Uターンする。相方のこと、その家族の
こと、どれを選んで、どれを選ばないのか、考えなければならないことが多すぎる。


このエントリは手術も成功して、26日に退院が決まったので安心して書いてる。



夢から覚めたあと、しばらくウサギのほんのりした体温と、
前足と後ろ足が身体に密着する幸せな感じを反芻した。